自動車関連企業の幹部や安全運転管理者の方々と意見交換をさせていただく中で、「御社が事故ゼロを目指す理由は何ですか?」と質問すると、多くの場合、「弊社は自動車関連企業ですから」という率直な答えが返ってきます。
「なるほど、理解はできますが、それでは事故ゼロの達成は遠いですね」と答える私の目には、担当者の怪訝そうな顔が映ります。 「自動車関連企業だから事故してはいけないというお考えは尊重しますし、お気持ちは十分理解できます。しかし、それは窮屈です。交通事故防止活動、安全運転とは、仕方なく義務的に取り組むものではなく、もっと前向きに取り組むべき価値のある行動だとは思いませんか?」
私たちの交通環境は、人と自転車、自動車が同じ平面、道路を行き交うことで成立しているのですが、それが同時に交差することで衝突が発生し、事故になります。つまり、相互に譲り合うこと、これが安全で快適な交通環境を成立させるための最も基本的な条件だということです。
さて、自動車は安全性能を基本に設計され、精緻に製造された部品の組み合わせによって完成しています。様々な部品が個々の機能を発揮し、相互に支え合うことによって、自動車は安全で快適という本来の機能を発揮するのです。
すなわち、精緻な部品で完成する自動車の姿とは、人・自転車・自動車が互いに譲り合い支え合うことによって、事故のない安全な交通環境を構成しようとする、私たちの社会の理想の姿を示しているのです。
一人一人のドライバーが高い安全意識を持ち、安全運転を続け、習慣とすることによって、必ず死亡事故はゼロになります。
自動車が安全なものであることを誰よりも知り、その安全性を支える自動車関連企業であればこそ、そしてその一員であればこそ、一人のドライバーとして高い安全意識を備え、安全運転を習慣とすること、事故のない安全な交通環境の実現を本気になって目指すことが期待されているはずなのです。
自動車関連企業が事故ゼロを目指すべき理由、それは、自動車が安全であることを誰よりも知っているから、ではありませんか?