運転を哲学する男 小林眞のコラム 20 ながら運転 2/2

罰則の有無強弱で自分の運転を規制するのではなく、自分が事故を起こさないためにはどんな運転行動をとるべきなのかを真剣に考え、実行することが必要です。

 

停車中のスマホ使用に罰則がないからと、停車間際に、発車直後にもスマホの操作を行うため、前車の動きに気付かず追突する、そんな事故は頻発しています。

また、ハンズフリーは便利ですが、簡単な会話ならともかく、複雑な会話を続けることによって運転への集中力は減衰し、事故回避能力は大幅に低下することが証明されています。

ならば、簡単な会話で終了させ、その先の駐車場に車を止めてからゆっくり会話することが必要であり、それがハンズフリーの効果的な活用方法です。

 

「ながら運転」がなくならない理由のひとつは、「ながら運転」をしたすべてのドライバーが事故を起こすわけではない、ということです。「ながら運転」をすれば必ず事故を起こすのであれば、皆やめるに違いありません。しかし、「ながら運転」を含めて、交通事故の現実は、原因(ながら運転)と結果(事故)が直接結びついていないために、直接的な効果を求める抑止対策では、継続的な効果を期待することができないのです。

 

しかし、「ながら運転」によって失うものの大きさについて、本気で考えることができるのであれば、私たちはそれをやめることができます。

例えばスマホゲームの「ドラクエウォーク」、その楽しさを私は知りませんし、知りたいとも思いませんが、運転中にそれを続けることが楽しみであった中堅の学校教師は、ある日、自転車をはね、被害者を死亡させました。

奪ったものは、被害者の命、被害者家族の幸せ、それに自分の家族の幸せと将来。そして、その瞬間、自分の人生も失ったのです。

それは二度と取り戻すことができません。起こした事故をなかったことにはできません。

私たちのできることとは、「ながら運転」をしないことです。

「ながら運転」と引き換えに失うもの、その大きさを考えれば誰にでもわかる、明らかな答です。もう一度考えて、「ながら運転」をやめ、安全運転を習慣とすることによって、私たちは大切なものを守り続けることが必要なのです。

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