自転車のヘルメットについては、2023年4月1日、「すべての自転車利用者のヘルメット着用義務」を定めた改正道路交通法が施行され、まもなく1年が経過する。
T市では、T社、T警察署の三者が協力体制を確保して、自転車利用者(特に高校生)のヘルメット着用を推進し、事故防止に取り組んでいる。
この取組への参加を求められた当初、私は消極的だった。そもそも、道路交通法の改正に伴うヘルメットの着用率向上だけを目的とする活動であれば、私は参加しなかった。
法律が改正されたから、守らなくてはならない、守るべきだ……そんな施策・対策は人の行動を変化させる力を持たない。人は知識だけを根拠として行動しているのではないからだ。
ヘルメットの着用義務を定めた道路交通法の改正、その趣旨・目的については、事故被害の軽減化だけが伝えられいる。例えば、警視庁のホームページでは、次のように記載されている。
「自転車事故で死亡した人の64.9%が、頭部に致命傷を負っています。また、ヘルメットの着用状況による致死率では、着用している場合と比較して、着用していない場合の致死率は約2.7倍と高くなっています。自転車用ヘルメットを着用し、頭部を守ることが重要です」
つまり、簡単に言えば、ヘルメットの着用義務化とは、交通事故被害の軽減化、死亡事故を減らすための法改正だということになる。しかし、この説明に納得することはできない。
私は、交通事故被害の軽減化や死亡事故を減らす対策に異議を唱えているのではない。私たちが取り組む交通安全活動、事故防止活動とは、死亡事故の減少だけを目指すものではないからである。
改正法が施行された後も、私は自転車のヘルメット着用を訴えることはしなかった。もっぱら、自動車ドライバーに対する安全運転の習慣化を主張していた。
そんな、ヘルメット着用対策への参加に消極的だった私に、T社のKさんは話し始めた。
「あなたは10年前、歩行者保護運転を主導した。その理由のひとつが、子どもたちを守ることを通じて、子どもたちを将来の良いドライバーに育てること。そして、本当に安全な交通環境を創り出すことだと、私に話してくれました。
(以下、次号に続く)