運転を哲学する男 小林眞のコラム 33 歩行者保護 その7

(前号から続く)

横断歩行者妨害違反の継続的な検挙活動によって、K警察署管内の事故は減少しましたが、死亡事故は減りませんでした。そのため、K警察署の歩行者保護対策、取締活動が警察本部から高い評価を受けることはありませんでした。

しかし、対策を始めて3年目の年、死亡事故の発生はそれまでの半分以下の4件になりました。同時にその年(2016年)から、JAFが「信号機のない横断歩道」における歩行者優先(止まるか止まらないか)の実態調査を行い、発表するようになりました。調査の最初の年、歩行者が横断歩道を渡ろうとしている場面で一時停止した車は、全国平均でわずか7.6%にすぎませんでした。

そして、翌年から都道府県別の結果を発表したことによって、各都道府県はその数値に大きな衝撃を受け、特に最下位であった府県は、汚名を返上すべく対策を講じることを余儀なくされました。

こうして、全国の都道府県において歩行者保護、横断歩行者妨害違反の検挙活動が重点的に取り組まれるようになった矢先の2019年4月、池袋暴走事故が発生しました。東池袋駅付近の交差点で乗用車が暴走し、母子2人が死亡、他にも9人が負傷する事故が発生したのです。

こうしたことが背景となり、全国で歩行者保護運転が重点的な課題として取り組まれるようになりました。JAFの調査結果も、8年後の2024年には、横断歩道における停止率が53.0%まで向上しました。しかし、未だに半分近い車(ドライバー)が止まらないという現実に対して、私たちは何を考えるべきなのでしょうか。

 

何故、車ばかりに安全運転を要求するのか? という質問を受けたこともありましたが、「人と車が衝突した場合、ケガをするのは歩行者だからです」と答えていました。

そもそも、道路交通法には事故を防ぐために様々な規定が整備されています。

道路交通法第38条には、車は、横断歩道に接近する場合は止まれる速度で接近し、横断しようとする歩行者がいる場合には止まること(第1項)が定められています。また、交差点の進行方法について、第36条第4項は、交差点の安全通行義務について、「車両や横断歩行者に注意し、安全な速度と方法で進行すること」と定め、更に、第70条は、「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転する」という安全運転義務を定めています。

 

(次号に続く)

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