(前号から続く。記者に向けて)
「歩行者保護運転を基本とする、そのための検挙活動を行うべき現在とは、新しい運転行動を強制されるドライバーだけではなく、検挙活動を行い、継続する警察官にとっても辛い時期なのだと思います。警察官は、検挙することが楽しいのではありません。交通事故を防ぐための必要な活動として、文句を言われながらもへこたれず、我慢して検挙活動を続けているのです。
横断歩行者妨害違反の検挙活動、それが歩行者の命を守り、ドライバーの人生を守るために必要な警察活動であることが理解され、現実となることを通じて、歩行者の安全意識も高まることが期待されます。
歩行者保護運転を出発点として、歩行者・自転車・ドライバーが支え合うことによって実現される安全な交通環境こそ、誰もが期待する私たちの社会の姿であり、その実現に向けた警察活動こそ理解と共感、そして支持を得られるはずなのです。
理解と協力で終わるのではなく、共感と支持を得られる施策・対策であればこそ、将来の交通環境を進化させる力を備えているのだと考えているのです」
私は、署員に向けて指示しました。
「歩行者保護を運転の基本とすることによって、私たちは過去、どの時代にも実現することのできなかった、本当に事故のない安全な交通環境を創り出すことができる。
そのためには、少なくともこれから10年間、歩行者保護運転を伝え、必要な横断歩行者妨害違反の検挙を続けなければならない。10年間、それは、小学3年生の子どもがドライバーになるまでの時間のことだ。
今、市内のドライバーは、検挙されないために横断歩道で止まっている。しかし、それはやがて習慣となる。
そして、横断歩道で待っていれば車が止まってくれる交通環境で育った子どもたちは、最初から止まるドライバーになる。そうなれば、もう、横断歩行者妨害違反の検挙活動など必要ない。
横断歩道上で歩行者や自転車が事故にあうことなどない、安全な交通環境の実現に向けて、私たちはあきらめることなく努力を重ねていかなければならない。
私たちの社会として期待されているのは、子どもの命が守られる安全な交通環境である。そして、それを実現するためには、市民の共感と支持を得られるまで、粘り強く、丁寧に説明を尽くし、検挙活動を続けていくことが必要なのだ。
将来に向けた社会の期待、市民の期待に応えること、それは私たちの果たすべき役割であり、課せられた義務なのだ」
(次号に続く)