運転を哲学する男 小林眞のコラム 24 飲酒運転 2/2

飲酒運手のトラックに追突された乗用車は、二人のお嬢さんを乗せたまま炎に包まれました。そしてその光景は、偶然通りかかったテレビクルーによって録画され、全国に放映されたのです。

この事故が契機となって道路交通法は大幅に罰則が強化され、その2年半後に施行されましたが、その背景で何が起こっていたのかを伝える人は少なく、知る人はほとんどいません。

 

飲酒運転の罰則が大幅に強化されるまでの間に、ひき逃げ事故の発生件数が約3倍に増加していたのです。

それは何を意味するのでしょうか? あの事故をきっかけとして、飲酒運転は絶対に許されないということが社会の常識になりました。しかし、その反対側で、「俺は酒に強いから大丈夫」「これまで飲んで運転しても事故なんてしなかったから大丈夫」と、何の根拠もない自己過信や過去の成功体験を根拠にして、それまでと同じように飲酒運転を続けたドライバーが存在したのです。

そして、そんなドライバーが事故を起こした瞬間に思ったこと、それは「まずい、逃げよう」だったに違いありません。その結果が、ひき逃げ事故の3倍増につながったのだと思われます。

 

法改正、罰則強化によって飲酒運転による事故は減ったのでしょう。しかし、その行為が違法であること、危険であること、事故につながることなど、考えればわかることです。

自分の運転行動を、罰則の有無やその強弱で規制するのではなく、何故、私たちは、自らの知見や判断力によって安全運転へと変化させることができないのでしょうか。

自分の人生を守るため、家族の幸せを守るため、そして、子どもたちの未来を、交通事故のない安全な交通環境にするために必要なこと、それは、交通事故という現実と向き合い、安全運転を習慣とすることについて、本気になって考え、自ら決意すること、ただ、それだけのことなのだと私は思っているのです。

PAGE TOP