前回、安全運転管理の目的について、それは社員教育・育成の基本であることをお話ししました。今回は、こうした安全運転管理が抱える課題と対応について、お話しします。
安全運転管理として最も具体的な課題とは、事故発生件数の増減なのだと思います。
前年比で減少していれば安心して、これまでの施策を継続することになります。しかし、増加した場合には、増加原因を分析してその抑止対策を加えなければなりません。
しかし、交通事故の発生件数とは、前年の交通安全活動・交通事故防止対策の成果ではなく、経過に過ぎません。減少した前年の対策が有効であり、増加した前年の対策が無駄であったとは限らないのです。その因果関係は誰にも証明できません。交通事故防止対策と事故発生件数との間には、常に時差、偏差、誤差が存在するからです。
もちろん、事故の発生状況を数値に示し、増減(傾向)を確認することは必要です。事故の発生状況、その経過や傾向を知らずして適切な対応は不可能だからです。
しかし、私たちが決して忘れてはならないこととは、対前年比の増減に一喜一憂すべきではないということです。事故の増加とともに対策を増加させるだけでは、事故を減らしていく効果は期待できません。
私たちはもっと広い視野を持ち、少し高い場所から、長いスパンで交通情勢・事故発生状況を眺め、考えてみることが必要です。前年比の増減を分析し、その原因・対策を議論するだけではなく、より長い時間の中で傾向を判断する、そして、件数だけではなく、事故類型とその背景も視野に入れるべきです。
特に、少子化と若者の車離れに伴う安全意識の変化については、高齢化に伴う高齢者の事故増加以上に、私たち、私たちの社会は、強い関心を持つべきだと考えています。