「安全運転のために最も大切なことは何ですか?」と問われると、私は「止まることです」と答えています。
質問してくださった方は、そんな答えでは納得できない様子ですので、付け加えて説明します。
そもそも、車は、止まることができるから走ることが許されています。ドライバーが危険を感じたとき、車が止まれない乗り物であるなら、そんな危険なものを走らせることなど許されません。つまり、車は止まれる範囲内でこそ、走ることが許されているのです。
そして、止まるべき場所はいくつもあります。
一時停止場所、歩行者が待っている横断歩道など、止まることによって事故を防ぐべき場所はたくさんありますが、そこで止まらないために、多くの事故が発生しています。
私は止まっています、と多くのドライバーが答えますが、いえいえ、止まっていませんね。特に一時停止場所、停止線の手前で正しく止まっているドライバーはほとんどいません。
一時停止場所とは、左右の安全を確認する場所ではありません。左右が見えない場所でも、停止線の手前で一度、確実に止まることによって事故を防ぐ場所です。
そして、「止まる」こととは、ブレーキを踏んで、減速して、止まるまで「待つ」ということです。
ほとんどのドライバーは、ブレーキを踏んで減速しただけで、止まることなく、左右を確認しながら交差点に進入します。そして、その瞬間に自転車や歩行者と衝突するのです。
止まることとは、車が止まるまで「待つ」ことであり、止まるまで待つ「時間」が必要です。止まるまでのわずかな時間、それを待つことができるかどうか、これが事故を防ぎ続けることのできる安全運転かどうかの分水嶺です。
車が止まるまで待つ、そのために必要なものとは、「心の余裕」です。そして、心にゆとりを持ち、車が止まるまで待つ、そんな落ち着いた運転こそ、私たちにとって最も大切な安全運転の基本なのです。