運転を哲学する男 小林眞のコラム 23 飲酒運転 1/2

私は、安全運転管理者法定講習の講師を務めていますが、最も注意すべき重大な違反として「ながら運転」「一時不停止」「横断歩行者妨害」の3つの違反を挙げて説明します。すると、「飲酒運転はいいんですか?」という質問があります。

私が「飲酒運転」についての説明を省略するのは、法定講習という限られた時間の中で、最も大切なことを伝えなければならないことを考えたとき、受講者である安全運転管理者の方々に向けて、「飲酒運転はやめましょう」なんて、無駄だからです。

しかし、私たちの交通環境の現実は、安全運転を呼びかけても振り向かない、交通事故の悲惨さを訴えても耳を貸さない人たちが存在することを示しています。例えば、運転中にシートベルトを着用しない1%のドライバー。そんな人たちは、飲酒運転の危険性を伝えても耳を貸さず、飲酒運転事故の悲惨さの訴えに振り向くことはないのでしょう。

 

2002年、飲酒運転の罰則が大幅に強化された改正道路交通法が施行されました。酒気帯び運転の基準が「呼気1リットル中のアルコール量0.25mg以上」から「0.15mg以上」と厳しくなったほか、11月には「危険運転致死傷罪」が刑法に新設されました。

ところで、そのきっかけとなった交通事故について、皆さんはご存じでしょうか?

それは、1999年11月28日、東名高速道路用賀インターチェンジの手前でに発生した死亡事故です。

秋の行楽期、箱根での家族旅行を終えて家路に向かう一家4人の車に、泥酔したトラックが追突し、追突された乗用車は火災・炎上したのです。

運転席・助手席にいたご両親は命を取り留めましたが、後部座席に座っていた3歳と1歳のお嬢さんは、逃げることも助け出すこともできず、そのまま車内で焼死されたのです。そして、生きたまま炎に包まれた最後の叫び声を、ご両親は聞いていたのです。

(以下、次号に続く)

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