運転を哲学する男 小林眞のコラム 12 交通安全活動

交通安全活動、交通事故防止活動については、誰も反対することはありません。誰もがその必要性を理解していますから、交通安全・事故防止活動には参加・協力します。

一方で、過去の安全運転指導とは、「あれしろ、これしろ、事故するな」でした。しかし、こうした結果に対する指導には、本質的に事故を減らす力はありません。

そして、交通安全活動そのものが抱えている難しさもあります。

ひとつが、その効果が検証できないことです。ひとつの事故防止対策を講じたとしても、その後の事故発生件数の増減が、その対策の効果であったという証明ができないのです。常に、時差、偏差、誤差が存在するため、因果関係は明確になりません。

もうひとつは、守られる命に名前がない、ということです。

地震の後、瓦礫の下に埋もれた命を助けるためには誰もが全力を尽くします。そこに助けることのできる命があるからです。しかし、交通安全活動によって守られたはずの命とは、それがどこの誰のことなのか、誰にもわからないのです。

更に、普通の運転をしていても、ほとんどのドライバーは事故を起こないという現実も安全運転の妨げになっています。年間約0.5%、これが現実の人身事故発生率ですが、200人に1人という数字について、大半のドライバーは、交通事故を自分のこととは思えないのです。

そして何よりも、「私は大丈夫」という自己過信の気持ちが、安全運転を行うこと、続けることの妨げになっています。

 

交通事故防止活動の効果を上げるための要素とは、ドライバー自身の安全意識を高めることです。人の価値観に刺激を与え、運転行動に変化を与えることが不可欠です。つまり、「理解と協力」ではなく、「共感と支持」を得られる提案でなければ、その効果は一時的に過ぎません。

人の価値観に刺激を与えるメッセージと強い思い、それこそが事故ゼロを目指す私たちにとって大切なものであることを繰り返し思っているのです。

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